公衆衛生大学院 教育振興基金

ご挨拶

本学母体である聖路加国際病院を1901年に創設したR.B.トイスラー医師は、当時より公衆衛生における予防の重要を理解しており、1925年に公衆衛生専門医師と保健師を採用し、公衆衛生の理解が乏しい時代を切り拓きました。トイスラー博士の精神は今日まで受け継がれ、綿々と続く使命のもと、公衆衛生分野における高度専門職業人の育成を目的とし、2017年に本学公衆衛生学研究科の開設に至っています。

2020年1月、WHOが世界的大流行(パンデミック)を表明して以降、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、公衆衛生という概念の重要性と、感染予防における個人衛生と集団の健康の関係を、過酷な経験を通じて私たちに示しています。またCOVID-19は、疫病が医療のみならず政治・経済・教育・交通・差別心理等、様々な分野に甚大な影響を及ぼす災害であることも教えてくれました。

COVID-19への対応に見て取れるように、今日の公衆衛生上の問題を解決するには、国境を越え、世界中の人々が協働して取り組むことが不可欠です。本学の専門職学位課程では、修了要件を米国のスタンダードに準拠し42単位としており、我が国の大学院設置基準修了要件の30単位を遥かに上回ります。充実したカリキュラムのもと、国内外の優秀な学生に奨学金を支給し、留学生については、大学院開設以降これまで(2022年4月現在)までに19か国、35名の外国人学生を受け入れてきました。

奨学金の措置など、優れた学生を支援し育成するためには、なお多額の資金を必要としております。将来、世界の人々が健康で暮らせる社会を実現するため、公衆衛生の知恵と技をもって社会貢献のできる高度専門職業人の育成を立ち止まることなく推し進めることのできるよう、皆さまのご支援をお寄せいただければ有難く存じます。

ご理解ご協力のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。

聖路加国際大学
学長 堀内成子

SDGs =国連が定める17の持続可能な開発目標

21世紀の地球上には、新興感染症、高齢化、医療格差、環境問題、気候変動など人々の健康にかかわる問題が山積しています。公衆衛生学はこれらの課題に対峙し、解決の糸口を探り、世界の人々の健康と幸福を実現するために欠かせない学問であり、その考え方は、SDGsゴール3「すべての人に健康と福祉を」をはじめ、その他の多くの目標と密接にかかわっています。

公衆衛生大学院教育振興基金について

ご寄付いただいた公衆衛生大学院教育振興基金は、次のような活動に使用してまいります。

先が見えない時代の医療革新: IT・AI技術を利用した臨床研究・教育

本大学院では、隣接する聖路加国際病院の診療データや健診データを利用して、AI技術を応用した診断技術や予防医学の向上に貢献できる人材を養成しています。また感染症モデル、健康行動科学の研究方法を用いて将来起こりうる状況をシミュレーションできる研究・教育を行い、超高齢社会の医療費の増大、パンデミックのような有事の医療経済や医療政策に貢献できる人材を育成しています。

アジアやアフリカ諸国のグローバルリーダー育成:国内外の優秀な学生への奨学金

人々の健康を守るには、一部の地域や国だけではなく、世界が協働して取り組むことが重要です。本大学院は国際的に活躍できる公衆衛生のスペシャリストの育成をミッションに掲げ、日本で唯一全ての授業を英語で行う公衆衛生大学院として、さまざまな国から留学生を受け入れています。特に紛争や貧困により医療体制が整備されていないアジアやアフリカ諸国では公衆衛生の支援を必要としており、私たちは将来それらの国の公衆衛生を牽引するリーダーとして活躍が期待される学生に対し奨学金を支給して、人材育成を行っています。

これまで受け入れてきた留学生の母国:バングラデシュ、ブータン、エジプト、エスワティニ、ガーナ、ケニア、マレーシア、ミャンマー、ネパール、シリア、トンガ、ベトナムなど

環境問題に対応する持続可能な都市づくりの研究・教育への資金

気候変動、感染症パンデミック、環境災害など、環境に関する問題は私たちの健康に大きく影響を及ぼします。クリーンな空気、水、土壌、食品を持続する努力を続けなければ健康で豊かな生活を維持することは不可能です。本大学院では、実際の研究事例を基に、これらの問題解決に向けた持続可能な都市づくりや正しく命を守る方法について教育を行っています。また感染症や熱中症の予防行動など一般市民に向けたすぐに活用できる情報の発信にも努めています。

このように、最新の研究や教育、国内外の優秀な学生の確保、質の高い教育者の招聘、それに相応した設備の維持などには多額の資金を必要とします。このためご賛同いただける方々にぜひご協力をお願いしたく、寄付金の募集に至りました。皆様のご支援による浄財は、上記目的の達成のために、公衆衛生大学院教育振興基金として適正に管理・運用してまいります。

世界のすべての人に健康と福祉が公平にいきわたる社会の実現のため、それを担う人材を育成することこそが長年日本の公衆衛生に貢献してきた聖路加のこれからの使命と考えています。すべての人々が健康で幸せに暮らせる社会の実現のために、聖路加の使命にお力を貸していただけますようお願い申し上げます

募集要項

【募金目的】
聖路加国際大学 専門職大学院 公衆衛生学研究科における奨学金その他の教育研究振興費に充てることを目的とします。
【募金目標額】
1億円
【募金期間】
2022年4月1日~2027年3月31日(令和4年4月1日~令和9年3月31日)
【顕彰】
個人の方10万円以上、法人の方100万円以上ご寄附いただいた方は、大村進・美枝子記念 聖路加臨床学術センターに設置した銘板にご芳名を掲載し、末永く顕彰させていただきます。
【税制の優遇措置】
本寄付金は教育研究のための寄付金として税制の優遇措置の対象となります。
個人の方は税額控除か所得控除、いずれかの適用を受けることができます。
法人の方は日本私立学校振興・共済事業団の受配者指定寄付金制度の利用により、全額損金算入ができます。
詳しくは、募金室担当までお問い合わせください。
【お問合せ先】
学校法人聖路加国際大学 募金室
〒104-0044 東京都中央区明石町10-1
電話:03-5550-2368 (直)
Fax:03-5565-1626
Eメール:bokinsitu@luke.ac.jp

公衆衛生大学院について

1. 国際的に活躍できる公衆衛生のスペシャリストを育成

人々が健康で暮らす社会を守るためには、一部の地域や国だけでの取組みでは不十分であり、世界全体が協働して人々の健康について取り組むことが大切です。世界がCOVID-19を経験したことで、そのことがより浮き彫りになりました。世界では紛争や貧困などによって医療・保健体制が整備されていない地域や国が数多くあります。本大学院では、さまざまな国や異なる背景・職種をもつ国内外の学生と教員が互いの違いを尊重しながら協力して学ぶ環境を整え、支援や取り組みが必要な国や地域で国際的に活躍できる公衆衛生のスペシャリストを育成しています。

2. 日本の公衆衛生の取組みを世界の健康に活かす

日本は世界でも有数の長寿国といわれるようになって久しく、まもなく人生100年時代を迎えつつあります。先進国でもいち早く国民皆保険を導入し、誰もが医療機関を自由に選び、比較的安い医療費で高い水準の医療を受けることができるようになりました。また衛生環境を整備し、常時安全な水を摂取できるようになったこと、検診の受診率が高まったこと、生活習慣や栄養状態が改善したことなどにより、脳卒中や心臓病が大きく減少しました。日本が長寿国となった要因には、このような医療体制や公衆衛生の整備が大きく関わっています。

1960年代、日本は脳梗塞による死亡率が先進国の中で最も高い国の一つでしたが、国を挙げて減塩推進に取組んだことで約30年後(1994年)には、4分の1以下にまで減少しました。またこの取り組みは費用対効果が高いことも示され、優れた公衆衛生学的アプローチとして世界的に高い評価を得ました。

一方、急速な少子超高齢化社会の中で増大する国民医療費に対して世界に誇るべき優れた社会保障制度をどう両立させ維持するか、日本にはこれから取り組む課題が山積しています。医療、経済、政策などさまざまな分野の専門家が立場の違いを超え、共通の価値観(人々が健康な状態で長く生活できる社会)を持ち、公衆衛生という共通言語で議論を重ね協力し合いながら取り組むことが、喫緊の課題です。

世界がこの先迎える公衆衛生学的課題を率先して取り組み、その問題解決・経験を世界に共有することが今後の日本の公衆衛生の役割であり、それが日本で公衆衛生を学ぶ最も重要な点の一つです。

3. 聖路加の公衆衛生の取組み

聖路加の公衆衛生の取組みの始まりは100年以上も前にさかのぼります。創設者のトイスラー博士は、1901年の開設当初から公衆衛生と予防医療を重視し、本学のカリキュラムに早くから公衆衛生学を取り入れ、また聖路加国際病院では公衆衛生専門医師と保健師を採用しました。1935年には日本で最初の都市型保健所となった京橋保健館(現中央区保健所)の設立に深く関わり、日本の公衆衛生の基礎を築きました。トイスラー博士亡き後も聖路加国際病院のウェルベビークリニック、人間ドック部門の開設など、公衆衛生と予防の活動が継承されてきました。21世紀以降は疫学や生物統計学を駆使したEBM(根拠に基づく医療)や医療の質の改善と患者安全の向上を目的としたQIプロジェクトを実施し、その業績が国際病院最高位賞を受賞するなど国際的にも高く評価されています。今後も聖路加が長年積み重ねてきた公衆衛生の教育や取り組みを総合的に生かして、人々の健康と幸福に寄与してまいります。

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