日本初のマグネット認証

鈴木 千晴(すずき・ちはる)

聖路加国際病院では、2019年11月、ANCC(米国看護認証センター)のMagnetRecognition Program®の認証(「マグネット認証」)を受けた。これは、日本で初めてのことである。

私とこの認証の出会いは、6年前にアメリカの認証病院を訪問したことから始まる。当院がこの認証を目指すにあたって、数名の看護管理者が見学者として選抜された中に、偶然、私も入っていた。正直に言うと、この時、私を含むメンバー全員が、もうすでに当院は認証取得基準をほとんど満たしていると感じていた。この認証が求める卓越した看護実践や、自律した看護実践は、すでに当院の中にあると感じていたからだ。それから、実際の認証を得るまで6年の歳月がかかった。これが長いか、短いかは、この認証を受けている病院はアメリカ本土でも8%弱しかないことを、含めて判断してほしい。

私がこの6年間で最も時間を費やしたことは、私たちの看護実践をこの認証の要件に当てはめ、事例として文章化することだった。この作業をする中で、溢れるほどの素睛らしい実践を見つけた。その度にとても誇らしく、嬉しい作業であった。しかしその反面、その素晴らしい実践が、現場では当たり前なことになり、なかなか見つけられない時期も長くあった。自分たちの看護の素睛らしさに気づきアピールすること、仲間の素晴らしい実践を認め合うことが、この認証を目指すうえでの当院の大きな課題となった。

2019年7月に書類審査に合格し、9月に実地審査に3名の審査官が来日した。3日半という短い期間に、審査官は80以上のセッションで700名以上の院内職員へのインタビューを行った。インタビューを受けた職員たちに、どの審査官も非常に驚いていた。私の心配したアピール下手は何だったのだろうと目を疑うほどに、誰もが自分の看護に対する情熱と自信を語っていた。そして、看護師だけでなく聖路加の職員がひとつになって、自分たちの看護や医療を語り、示した3日半となった。この光景を見ながら、我々の看護実践は、マグネット認証のためだけに準備されたものではなく、当院が長い時間をかけ培ってきたものであると再認識した。

認証を受けたことはゴールではなく、この認証プログラムの知恵を使いながら、当院らしさを大切にしながら、聖路加国際病院とその看護がさらなる成長を続けていくための新たなスタートを切れたことを、嬉しく思う。

実施審査で審査を迎えるスタッフの様子 (2019年9月) 実施審査で審査を迎えるスタッフの様子 (2019年9月) マグネット認証の認定証と盾 (2019年11月) マグネット認証の認定証と盾 (2019年11月)
Profile

Class of 1995。聖路加国際病院副院長・看護部長。1997年聖路加国際病院入職。2019年より現職。

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